神経を抜いた歯がある方は、「神経を抜いてしまった歯って、なんだか弱いのかしら?」と感覚的に
思ってしまうことがあるかもしれません。
 
その主な理由については、歯医者さん事典の⑫~⑭の記事でご説明してきましたが、それ以外にも
「神経を抜いた歯に起こりやすいこと」があります。
 
 
それは「歯の根が割れてしまう」ことです。 ちょっとびっくりされましたか?
 
歯の根が割れてしまうと、抜歯するしか方法はありません。
(※状態が良い場合は、稀に保存できることもありますが一般的には抜歯になります。)
 
神経を抜いてしまった歯というのは、血管や神経がありませんので非常に脆い状態になっています。
 
土台をたてたり、補強を行い歯を被せるのですが、1年365日朝昼晩と食事をする度に力がかかって
きますので、長い年月使っているうちに「歯の根にヒビ」が入ってしまうことがあるのです。
 
イラストをご覧下さい。
 
201505021
 
緑の矢印の様に力が長年かかってくると、Aの様に歯の根にヒビがはいってきます。
このヒビに沿って細菌が繁殖し、歯の根の周りの骨を破壊して膿の袋を作ります。
 
例えて言うのなら、コップにヒビが入ってしまった時のことをイメージしてみて下さい。
 
コップにヒビが入った状態で使い続けていくと、ヒビに沿って茶渋が染み込んでいきますね。
イラストのBで示したのがその時の状態です。
 
緑のヒビの周りに、赤い斜線で描き示している部分が膿の袋になります。
 
痛みも無くじわじわと進行していきますので、患者さんご自身はこの進行に気づいていないことが
多いのです。
 
更に進行して行くと、下のイラストの様に膿の逃げ道を作り出します。
 
201505022
 
歯肉のところにプクっとオデキのような物ができた経験はありませんか?
意外と気づいていない方も多いみたいですね。
 
気づいていたとしても、特に激痛があるわけでも無いので、ご自身で一時期的にプチっと潰しても
小さくなりますのでそのまま放置している事がほとんどです。
 
もちろん、歯の根の先に膿の袋が出来た時と同様、体調が悪かったり膿の中の細菌の活動が急激に
活発になり、突然歯肉が腫れ痛みが出ることもあります。
 
この場合も意外と気づかずに放置されてる割合が多いかもしれません。
 
さらに、このヒビが広がっていくと下のイラストの様にばります。
 
201505023
 
この状態に近づいてくると、歯が揺れてきたり物を噛むと痛みが生じる様になってきます。
 
イラストでは膿の袋や骨の状態までを上手に表現することができなかったのですが、Cの状態に
なると、周囲の骨もかなりの広範囲で破壊されてしまいます。
 
ここまでになると、歯を残すことは不可能で、歯が割れてしまうと抜歯しかありません。
 
神経の無い歯が様々なリスクを背負っていることはおわかりいただけたでしょうか?
 
手遅れにならない為にも、神経にまで到達してしまう大きな虫歯になる前に、痛みを感じる前に
歯医者さんへの受診をしていただきたいと心から強く思います。