歯医者さん事典vol.119〜お口を閉じることって大事〜前歯にツヤがないのはお口を開けていたからかも〜
上の前歯の治療をした患者さんのお話。
初めて来院されたころは、歯の表面や歯と歯肉の境目にプラークが付着して、歯肉からも出血しているような状態でした。
そのような状態でしたから、一番気になっていた上の前歯の虫歯の治療は、歯肉からの出血が治まってから行うこととしました。
(→過去記事:歯医者さん事典vol.21~歯肉から出血してると虫歯の治療が難しくなるのはなぜ?~)
やはり女の子ですから、特に前歯は気になります。
「少しでも早く治療したい!」そんな思いで、デンタルフロスを頑張っていくうちに、ようやく歯肉からの出血が治まって来ました。
そこで晴れて、次はいよいよ上の前歯の治療を行うことができたのですが・・・・
ふと、妙なことに気づきました。
上の前歯にツヤがないのです。
当初は、歯の表面にプラークがついているのかな?と思って触ってみたのですが・・・
「ん??ついてない・・・」
患者さんご自身、フロスも頑張っているから、完璧とは行かないまでも出血はしなくなっている・・・・
唾液の性状も以前のネバネバしている状態からサラサラの唾液に変わっている・・・
それなのに、なぜか歯にツヤがなくってマットな感じなのです。
よお~くよく観察してみたら・・・原因が分かりました!!
こちらの患者さん、お口を閉じないんです。
というより、普通にしている状態がどちらかというと上くちびるが開いて上の前歯が見えているような感じ・・・。
患者さんに「普段、お口は閉じていますか??」とお聞きしたら・・・
「そう言われてみれば、閉じていないかもしれないです。」とのこと。
そうなんです。
お口を閉じていなかったために、唾液のチカラが働かなかったのです。
食事をしてお口の中が酸性に傾くと、歯の表面のエナメル質に含まれるカルシウムやリンが溶け出していきます。
唾液にはこの弱くなったエナメル質を再石灰化する作用がありますが、上の前歯には唾液が触れていなかったので、再石灰化することができなかったのです。
そのため、上の前歯の表面のエナメル質にはツヤが無くなってザラザラした感じになっていました。
同じお口の中なのに、下の前歯はツヤツヤして滑らかで、上の前歯はザラザラしてマットな感じ・・・。
とても同じ人の歯とは思えないほどの違いでした。
唾液のチカラ、侮れないですね!
お口を閉じることについては、他にも色々とお話したいことがあります。
それはまた、次の機会に詳しくお話しますね。
過去記事参照
*唾液のチカラについては歯医者さん事典vol.41~唾液のチカラ~をご覧下さいね。
*再石灰化については歯医者さん事典vol.58~弱ってしまったエナメル質って元に戻るの?~