神経を抜いた歯が痛み、歯の根の先に膿の袋が出来たとき
前回は、神経を抜いた歯には知覚(しみたり痛みを感じたりする感覚)が無い為、虫歯が進行していても
気づかないでいることが多いということをお話しさせていただきました。
「神経を抜いてしまったら、歯が痛くなることは無くなるのでしょ?」とお思いになられる方もいらっしゃ
るかもしれませんね。
神経を抜いた歯なのに、痛みが出たのはどうして?と仰って来院される患者さんも多いのです。
「えっ?神経を抜いたら知覚が無くなるって書いてあったのに?」と疑問が頭を駆け巡りますよね。
実は、「神経を抜いた歯に痛みを感じる原因」は主に3つ程あります。
その中で最も多いのは、歯の根の先端に細菌が感染してしまい炎症を起こしている場合なのです。
まだまだ疑問が解けないと思いますので、今日は「神経を抜いた歯に痛みが生じる」ということについて
詳しく説明をして参ります。
歯の根の先端に細菌が感染してしまうと、長い年月をかけてじわじわと、歯の根の周りの骨を破壊して
「膿の袋」を作ります。
下記のイラストがそのイメージです。
疲れた時や体調が思わしくない時に、歯が浮いたような違和感があったり痛みを感じやすいのですが、
普段は然程気にはならない為、知らず知らずのうちに病巣が広がっていきます。
ある日突然、ズキズキとした痛みが出て我慢できずに歯医者さんへ来院。患者さんもかなり痛く辛そう・・・。
例えば、皮膚に細菌が感染して水泡や膿の袋ができたとしても、皮膚が風船のように伸びてくれます。
歯の根の周囲というのは硬い骨に囲まれているので、根の先端にできた膿の袋ができても皮膚の様に伸びない
ため、パンパンになっても膨らみきれずにいるのです。
イラストご覧下さいね。
根の先端は骨に囲まれて、上の方には金属の被せ物でスッポリ蓋をされている状態。
当然ながら、内側の圧力が大きくなり過ぎてしまいどんどん痛みが増してきます。
この場合は、上のイラストの様に歯の被せ物を外し、根の治療した際の古い薬を取り替えてます。そして膿が
外に出やすい様に解放してあげます。
すると、今まで内側で圧迫されていた状態からすっと楽になります。
次に、溜まった膿を出し根の中をきれいに清掃と消毒を行います。
痛みが軽減または治まったとしても、根の炎症がきちんと治まるまでは中の薬を交換する必要があります。
酷い場合は、しばらくの間膿が出続けることもあります。
根の治療というのは、根気強く治療をしていかないといけないのですが、途中で治療に来なくなってしまう
患者さんも多いのが事実です。
痛みが無くなり楽にはなったけれど、目に見えての変化を感じ難いから患者さんご自身のモチベーションも
下がってしまうからなのでしょうかね・・・。
しかし、この根の治療を途中で放棄してしまうことは、実はとっても怖いことなのです!!
痛みが無くなったとしても、完全に治癒したわけではありませんので、炎症の原因である根の先端にある細菌
の病巣が益々広がっていくことになるのです。
広がってしまった病巣というのは、さらに治療が困難な方向にも・・・。
そして、残った歯も象牙質がむき出しの状態になっていますので、虫歯になって歯も脆くなります。
仮の蓋も取れてしまい、歯が欠けて、気づいた時には「歯の根だけ」になってしまっていたという患者さんも
少なくはありません。
残っている歯の根の虫歯が深いところまで進行していたら、たとえ痛みが無かったとしてもその部分に歯を作る
ことは不可能になります。
なぜ不可能なのかについては、別の機会にあらためてご説明いたしますが、今までお話させていただいた通り
神経を抜いた歯であっても痛みが生じるということがあるということは覚えていてくださいね。
そして、根の治療を途中で中断してしまう怖さも!!
次回は、今回お話しきれなかったことについて詳しく書いてみようと思っています。
わかりにくい部分がありましたら、お気軽にお問い合わせくださいね。