今日も恒例の「親不知シリーズ」です
「妊娠中に親不知が痛くなったら」についてお話いたしますね。
妊娠中に親不知が痛くなったのだけどどうしよう・・・と、不安になられた妊婦さん
がきっとたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
当院にも、妊娠中に親不知が痛くなり駆け込んでいらっしゃる患者さんが案外
多いのです。
しかも臨月であったりすることもしばしば。
患者さんのお話をお伺いしていると、妊娠中に突然腫れて痛みが出たのでは無く、
かなり以前から時折痛くなったり腫れたりを繰り返してい方や、ご本人も抜歯をしな
ければいけないことは分かっていたけれど、ついつい先延ばしにして現在に至って
しまったという方がほとんどです。
「あっ、まさに私のことだわ!!」と思われた方もいらっしゃることでしょう。
妊娠中に親不知が腫れて痛くなってしまうと、やはり通常よりは厄介になります。
妊娠中に服用しても比較的安全な痛み止めはありますが、薬の効果が穏やかなので、
歯医者さんに駆け込んで来るほどの痛みに対応しきれない場合があります。
もちろん、お薬を飲まずに済むのであれば、それがベストです。
前回の歯医者さん事典で、親不知のところが腫れてくるのは細菌感染なので、抗生剤
の服用が必要であるということをご説明させていただきました。
お薬の服用に関しては、その薬のあまり好ましくない作用(=副作用)と薬を服用するこ
とにより得られる効果(=効き目)の双方を充分に考慮する必要があります。
例えば、あまりの痛みに食事することもままならなくなってしまうと、母体の体力が低下しま
す。母体の体力が低下することで、お腹の中の赤ちゃんに悪影響を及ぼしてしまう場合には、
抗生剤を服用すべきなのですが、赤ちゃんへの心配を懸念し服用を拒まれる方もいらっしゃいます。
そのような場合は、「またすぐに再発するかもしれません」ということを前提に、腫れた歯肉
のところにお薬を塗布し対応させていただくことがあります。
お薬の塗布で済む場合は良いのですが、稀に、麻酔をして切開をしなければならないほど
腫れている患者さんもいらっしゃいます。
その際も、前述した薬の副作用と効き目について充分にお話した上で処置を行いますが、
できる事ならこちらとしても避けたいとろではありますし、患者さんご自身の不安で気が
進まない場合がほとんどです。
中には切開することを拒まれる方もいらっしゃいます。
このような場面に遭うたびに、「妊娠前に親不知は抜歯しておいた方が良い」と心から思
う次第です。
妊娠中でなければ、問題なくお薬を服用することもできますし、切開して膿を出すこともでき、
症状が治まった時点で抜歯することも出来ます。
薬を服用することや、麻酔して切開することにはリスクが生じます。
しかし、お口の中にそれだけの炎症があり、細菌が膿を出している状態をそのまま放置して
いることも、同様のリスクがあるのです。(このリスクについてはまた別の機会に歯医者さん事
典で説明します)
妊娠前に親不知の抜歯を済ませておくと、このような問題は起きません。
まだ抜かなければならない親不知、過去に痛くなったことがある親不知がある方は、先延ば
しせずに、妊娠する前に抜歯をしておいてくださいね。
親不知が腫れて痛くなり、つらい想いをしている妊婦さんをたくさん診ているだけに、心から思います。
私の思いが、一人でも多くの女性の方に伝わったら嬉しいです。