歯医者さん事典vol.60〜絶対に使って欲しくない歯磨き剤があります〜
「歯磨き剤ってどんなのが良いのでしょうか?」
患者さんから良く受ける質問です。
ドラッグストアーなどに行くと、いろいろな種類の歯磨き剤が売っているので迷ってしまいますよね。
歯科医院で取り扱っている歯磨き剤はそれぞれに特徴があるので、患者さん一人一人の状態に合ったものをご紹介しています。
正直、市販されている歯磨き剤は種類はたくさんあっても、それほど大きな違いはないんです。
ただ、「これだけは使わないで欲しい!」というものはあります。
それは、目で見て分かるようなつぶつぶの粒子が入っている歯磨き剤です。
つぶつぶの粒子の入っている歯磨き剤。
使用感はスッキリするのですが、実はこれ・・・かなり危険なシロモノなのです。
このつぶつぶ粒子入りの歯磨き剤を使用している患者さんのお口の中を見ると、このつぶつぶが残っているのですぐに分かります。
「もしかして・・・○○○○、使っています??」とお聞きすると、患者さんは「どうして分かったの?」とビックリした顔をなさいます。
このつぶつぶ・・・歯と歯肉の境目にいっぱい入り込んでいるのです。
歯と歯肉の境目のあたりに白い粒子が透けて見えて、そこを歯周ポケットを探る道具で触ると白い粒子が歯と歯肉の境目からいっぱい出て来ます。
イラストにしてみました。
このイラストと似たような絵を見た覚えはありませんか?
そうなのです。
歯と歯肉の境目(歯肉溝)にプラーク(細菌の塊)が付着している絵にとても似ています。
そのイラストはこちらです。
歯医者さん事典vol.18~歯肉からの出血が気になる方へ~で使用したイラストです。
歯肉溝の中に入り込んでいるのが、プラークじゃなくて白い粒子に変わっているだけ・・・
当然、白い粒子が入り込んでいる歯肉溝の周囲の歯肉には炎症が起きるので、そのまま放置すると上の絵のBのように歯肉が腫れて出血するようになってしまいます。
さらに、この白い粒子は歯のエナメル質に細かい傷を作ります。
しいて言えば、流しなどの汚れを落とす時に使うクレンザーとか、スクラブのイメージです。
細かい傷ができたエナメル質の表面はさらに着色や汚れがつきやすくなってしまいます。
お口のケアをしようと頑張っていたのに、歯肉に炎症が起きて歯の表面が傷ついてしまうなんて・・・悲しいですよね。
さらにさらに怖いことに、この粒子は分解されないのです。
身体の中で分解されるものでもありませんし、排水口から流れて行っても分解されずにそのまま残ってしまうものなのです。
歯にも歯肉にも環境にも優しくないのです。
「今使っている歯磨き剤、大丈夫かしら?」と不安になった方は・・・今一度ご自宅にある歯磨き剤を確認してみてくださいね。
”タバコのヤニを落とす!”とか、”粒子が汚れを落としてツルツルにする”みたいなキャッチコピーの歯磨き剤は特に要注意です。
歯磨き剤をチューブから出してみて、ペースト状のなめらかな状態よりも、つぶつぶ感ありありの粒子を目で見て確認できるようでしたら、
それも危ないかも。
あとはやはり、専門家に聞くのがベストなので、お近くの歯医者さんに行って相談してみてくださいね。